Java-Powered Simulator for Structural Vibration and Control |
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”Java-Powered Simulation for Structural Vibratoin and Control”ヘルプページへようこそ.このアプレット(ブラウザ上で実行されるプログラムのこと)では,地震波入力に対し構造物の応答を抑えるために用いられる2つの異なる制御システムの効果について比較・考察ができるプログラムです.2つの制御システムとして,この種の制振システム(Soong 1990; Housner et al., 1994; Fujino et al. 1996)で広く用いられているチューンドマスダンパ(TMD:Tuned Mass Damper)とハイブリッドマスダンパ(HMD:Hybrid Mass Damper)を取り扱っています.このような制御系はQuanser Consulting社により提供されているベンチスケールモデルでのAMD 実験を用いることにより実験的に検証することができます.
このシミュレーションプログラムでは,制御対象や制御システムの各パラメータを変えたとき,また各種地震波入力により強制加振させられたときの構造物の応答がどのように変化するのかを,制御時と非制御時での時刻歴応答,周波数応答並びに構造物モデルでのアニメーション表示により検証する事が出来,制御系設計の過程をよりよく理解するための勉強にも役立たせることができます.このプログラムでは以下の3つのケースについて取り扱っています.
TMDまたはHMDのマスが構造物に固定されている場合.
マスがバネとダンパーを介して構造物に取り付けられている場合.
ケース I でマスと構造物を接続するために用いたバネとダンパーの他に制御アクチュエータを取り付けた場合.今回のプログラムでは,アクチュエータの動特性を考慮しておらず,将来的にこれらの特性を考慮したプログラムを作成する予定です(Dyke, et al. 1995).
Structure Mass:構造物の質量.初期値は100[tons].
Structure Natural Frequency:構造物の固有振動数.初期値は1[Hz].
Structure Damping Ratio:構造物の内部減衰(率).初期値は0.01[-].
TMD/HMD Mass Ratio:TMD/HMDと構造物との質量比(=TMD/HMDの質量/構造物の質量).初期値は0.01[-].
TMD/HMD Natural Frequency:TMD/HMDの固有振動数.初期値は0.985[Hz].
TMD/HMD Damping Ratio:TMD/HMDの減衰率.初期値は0.075[-].
LQ制御器は,2次形式の評価関数を元に計算されるもので(理論を参照),設計パラメータq1〜q4は,それぞれ以下の状態量にかかる重みである.
q1 - 構造物の変位.制御入力にかかる重みrは1としている.
q2 - HMDの変位..
q3 - 構造物の速度.
q4 - HMDの速度.
表示させたい応答のラジオボタンをチェックして下さい.
アニメーション時におけるEarthquake FrameとTime Response Frameの時間軸の表示幅(単位は秒).アニメーションがスムーズに表示されない場合,この値を小さくすることで改善できます.
このスケールはアニメーション時における地面の動きに対して用いられるものです. 構造物の応答と地面の動きの両方で同じスケールを用いてアニメーション化した場合,地面の動きが少し分かりづらいかもしれません.アニメーション上での地面の動き(変位)は,元の変位にこの値を乗じたものをアニーメーション表示用の地面変位として用いており,この値を大きくすることで地面の動きがより顕著になります.このスケール値は,応答計算の結果やAnimation FrameのメニューでRelative Motionを選択した場合には影響を及ぼしません.アニメーションが表示領域内におさまるように,スケールの上限値が設定されています.初期値は1.
Calculate:このボタンを押した時点で,各パラメータに対応したテキストフィールドに入力されている値をもとに再計算を行います.”STRUCTURE”,”TMD/HMD”,”LQR CONTROL WEIGHTS”の値を変更した場合には,このボタンを押して構造物の応答を再計算させる必要があります.なお地震波応答の計算に0.02 [sec] (50 [Hz] ) の積分刻みを用いているため,構造物およびTMD/HMDの固有振動数を10 [Hz] 以下に設定して下さい.
Animate:地震波入力加振時の構造物の動きをアニメーション化します.アニメーションを表示している間,このボタンのラベルが”Stop Animate”に変わり,その間にもう一度押すことでアニメーションが停止します.
Reset Parameters:すべてのパラメータを初期値に戻します.
Help:ヘルプページにリンクしています.
Animation Frameでは,地震波によって加振されたときの構造物の様子をアニメーション表示します.フレーム下にある左側のメニューを選択することで,それに対応したケースについてのアニメーションを表示することができます.また,右側のメニューを選択することで,構造物の動きを絶対座標系または相対座標系から見た場合のアニメーションを表示できます.
Earthquake Signal Flameは,計算に使用する入力波の選択を行い,入力波として計算に使用している地震波を表示します.このアプレットでは,入力波として以下の4つの地震波を使用することができます.:
エルセントロ地震波:North-south component recorded at Imperial Valley Irrigation District substation in El Centro, California, during the Imperial Valley, California earthquake of May 18, 1940. マグニチュード7.1,最大加速度0.3495g.
十勝沖(八戸)地震波:NS成分,1968年3月16日八戸市にて観測,マグニチュード7.9,最大加速度0.2294g.
ノースリッジ地震波:North-south component recorded at Sylmar County Hospital parking lot in Sylmar, California, during the Northridge, California earthquake of Jan. 17, 1994.マグニチュード6.8最大加速度0.8428g.
兵庫県南部(神戸)地震波:NS成分,1995年1月17日神戸気象観測所にて記録,マグニチュード7.2,最大加速度0.8337g.
このフレームでは,それぞれの地震波の変位または加速度波形を表示させることができます.
Bode Plot Frameでは,ボード線図を表示します.ボード線図では,入力を地震波加速度,出力を構造物の変位,速度,加速度,TMD/HMDの変位,速度,加速度,またはアクチュエータの発生力としたときの伝達関数より,Time Response Frameで選択されている出力に応じたゲインと位相を表示します.
Time Response Frameでは,Earthquake Signal Frameで表示されている地震波入力に対する時刻歴応答を表示します.ここでは,構造物の変位,速度,絶対加速度,TMD/HMDの変位,速度,絶対加速度またはアクチュエータの発生力を表示することができます.各応答の最大値や応答低減(=免震時の最大応答値/固定時の最大応答値×100[%])などの情報がこのフレームの下部に表示されます.
構造物の剛性 , 構造物の減衰係数 , TMD/HMDの剛性 及びTMD/HMDの減衰係数 は以下のように求められる.
ここに,
は構造物の地面からの相対変位[m].
は上部構造の地面からの相対速度[m/s].
は上部構造の地面からの相対加速度[m/s2].
は地面の加速度[m/s2].
ここに,
はTMD/HMDの地面からの相対変位[m].
はTMD/HMDの地面からの相対速度[m/s].
はTMD/HMDの地面からの相対加速度[m/s2].
状態空間表現は,はアクチュエータの発生力[N].
はアクチュエータ駆動信号[V].
はアクチュエータの力変換係数[N/V].本プログラムでは, としている.
または,
または,
ここに,
は構造物の絶対加速度[m/s2].
TMD/HMDの絶対加速度[m/s2].
制御系設計のため,計測ノイズのない状態量をフィードバックするものと仮定する.LQR最適制御理論より,最適ゲイン行列Kは,アクチュエータ駆動信号
が,線形2次形式の評価関数
を最小にするように計算される.ここで,zは上述の連続時間系状態空間表現での状態量,Qは状態量にかかる重みで,以下のような形式で与えられる.
上述のように,制御量にかかる重みは1としている.ここで,地面の加速度は,この系への外乱入力としている.
状態フィードバックにおける評価関数を最小にする最適ゲイン行列Kは,次のように求められる.
ここに,Sは次のリカッチ方程式の正定解である.
リカッチ方程式の正定解を求めるアルゴリズムについては,Arnold and Laub (1984) を参考のこと.
最適ゲイン行列Kを用いて閉ループを構成することにより,この系は以下のように表される.
このシミュレーションプログラムでは,アクチュエータの動特性を考慮に入れていないが,アクチュエータのローリングや構造物と制御系と相互作用による影響を考慮することは,HMDなどの制振システムを構築する上で大変重要である(Dyke et al., 1995).将来的に,これらの現象の他,出力フィードバックによる制御方法もプログラムに含めていく予定である.
構造物の制御方法を実験により検証することは,最終的に実機への適用を計る上で非常に重要なことである(Dyke et al., 1996a,b).しかしながら,構造物の縮小モデルによる実験でさえ十分にできる施設を備えているところは数少ないのが現状である.近年,AMDを備えた構造物の評価のための模型モデル(bench-scale model)が開発されてきており,実際の構造物に対して制御を行った際に現れる制御系と構造物との相互作用や,アクチュエータとセンサの動特性の問題,アクチュエータの飽和効果(アクチュエータの力の飽和など),センサの測定範囲限界,出力フィードバックとデジタルコントローラの適用も含めた顕著な特徴を再現するものである(Battaini et al., 1998).Quanser Consulting社によって設計製造されているこのアクティブ制御実験が,制御系設計等の教育や,それを習熟させるために有用な道具であることを示してきた. |
National Science Foundation(NSF)によるご支援(認可番号CMS 95-28083,Dr. S.C. Liu, program director)に大変感謝しております.また,東京大学の藤野陽三教授には,神戸地震及び八戸地震の記録データの確保にご協力いただいき大変感謝しております.
Arnold W.F., III and Laub A.J. (1984). "Generalized Eigenproblem Algorithms and Software for Algebraic Riccati Equations," Proc. IEEE, 72, pp. 1746-1754.
Battaini, M., Yang, G., Spencer Jr., B.F. (1998). "Bench-Scale Experiment for Structural Control," Journal of Engineering Mechanics, ASCE, in press.
Dyke S.J., Spencer Jr. B.F., Quast P. and Sain M.K. (1995). "The Role of Control Structure Interaction in Protective System Design," Journal of Engineering Mechanics, ASCE, Vol. 121, No. 2, pp. 322-338.
Dyke, S.J., Spencer Jr., Quast P., Kaspari Jr., D.C. and Sain, M.K. (1996a). "Implementation of an Active Mass Driver Using Acceleration Feedback Control," Microcomputers in Civil Engineering: Special Issue on Active and Hybrid Structural Control, Vol. 11, pp. 305-323.
Dyke, S.J., Spencer Jr., B.F., Quast, P., Sain M.K., Kaspari Jr., D.C. and Soong, T.T. (1996b). "Acceleration Feedback Control of MDOF Structures," Journal of Engineering Mechanics, ASCE, Vol. 122, No. 9, pp. 907-918.
Fujino, Y., Soong, T.T. and Spencer Jr., B.F. (1996). "Structural Control: Basic Concepts and Applications," Proceedings of the ASCE Structures Congress XIV, Chicago, Illinois, pp. 1277-1287.
Housner, G.W., Masri, S.F. and Chassiakos, A.G., Eds. (1994). "Proceedings of the 1st World Conf. on Structural Control," Pasadena, CA..
Soong, T.T. (1990). "Active Structural Control, Theory and Practice," Longman Scientific and Technical, Essex, England.