Help Page for the Java-Powered Simulation for Base Isolation |
目次 | 英語のヘルプページへ |
| |
|
“Java-Powered Simulation for Base Isolation”のヘルプページへようこそ. このページでは,“Java-Powered Simulation for Base Isolation”の使用方法の他,運動方程式の導出や重要な定義などの理論的な説明が加えられており,さらに簡単な問題や参考文献が載せてあります.
免震(Base isolation)は,地震から建物を守るための大変重要な方法です.これは,構造物を外部の地面加振から絶縁しようとするものであり,地震エネルギーを建物の中で散逸するのではなく,このエネルギー自体が構造物に伝わらないようにするのである. この方法が優れていることを証明する事例として,1995年に発生した阪神淡路大震災において,免震装置を採用していた構造物がほとんど無傷のまま倒壊を免れたという事実が報告されました. このことによって,免震装置が地震による建物の倒壊を防ぐ方法として非常に有効であるということを証明し,近年ではその効果が大変注目を集めています.
そこでこのアプレットでは,免震装置が如何に重要であり有効であるかをシミュレーションによって比較・検証できるものとなっています. まず,このシミュレーションでは5つのケースについて取り扱っています. (i) では従来の耐震建物について,すなわち建物が地面の上に直接建てられている場合, (ii) 〜 (v) では,地面と構造物との間に免震装置を取り付け地震動が直接構造物に伝わらないようにした場合を取り扱っています. 現在,ゴム要素と減衰を得るために用いられている鉛プラグとからなる免震装置が広く適用されており,これらの要素には強い非線形性が含まれています. したがって,今までのシミュレーションで取り扱っていた線形モデルに加え,今回新たにこの非線形性を考慮に入れた免震システムのモデルを追加し,それぞれの応答を比較することができるようにいたしました. ケース (ii) では今まで用いていた線形の免震モデルを取り扱っていおり,この免震装置は,線形の減衰と剛性を有しているものとしています. ケース (iii) では非線形減衰を含んだ免震モデル,ケース (iv),(v) では,非線形剛性としてヒステリシス剛性を含んだモデルを取り上げています. ケース (iv) では Bouc-Wen モデルを,ケース (v) では Bilinear モデルを用いて,鉛プラグ内蔵型積層ゴムの復元力特性のモデル化を行いました. ここで,構造物は全て1自由度線形系モデルとしています.
このプログラムでは,構造物や免震装置の特性,そして加振入力として用いる地震波の種類を変更することができ,特性値の違いが応答にどのような影響を及ぼすのかを試すことができます. また各自で設計した装置の効果を,アニメーションによってでも確認できるようになっています.
このシミュレーションプログラムは,大まかに (1) Control Panel, (2) Animation Frame, (3) Excitation Signal Frame, (4) Response Spectra Plot Frame, (5) Time Response Frame の5つのコンポーネントから成り立っています.以下に,個々のコンポーネントの使用方法を説明していきます.
一番右側に位置しているのがコントロールパネルであり,このパネル上で構造物や免震装置,入力波の特性値を任意の値に変更することができます.また各応答を再計算させるためのボタンや,アニメーションを実行させるボタンなどもこのパネルに含まれています.
Structural Parameters
- Mass:上部構造の質量.初期値は100[tons].
- Natural Frequency:上部構造の固有振動数.初期値は1[Hz].
- Damping Ratio:上部構造の内部減衰(率).初期値は0.05[-].
Isolation System Parameters
- Mass Ratio:上部構造と基礎床との質量比(=基礎床の質量/上部構造の質量).初期値は0.1[-].
- Natural Frequency:免震層の固有振動数.初期値は0.5[Hz].
- Seismic Gap:構造物端部と免震ピット端部の隙間(下図参照).この間隔が狭すぎた場合,免震層と地面が衝突し構造物の倒壊を招く恐れがあります.それを回避するためにもこの値を免震層の最大変位より十分広く設計する必要があります.初期値は20[cm].
Fig. 2 Seismic Gap
- Damping Ratio of the Linear Isolator:線形モデルの時の免震層の減衰率.初期値は0.1[-].
- Nonlinear Damping Involution Coefficient of the Nonlinear Damping Isolator 非線形減衰を表すための速度に係る累乗係数.初期値は0.5[-].
- Initial Natural Frequency of the Hysteretic Isolator ヒステリシス剛性を持つ免震モデルの初期固有振動数.この値を元に弾性域の剛性を算出しています.初期値は1.0[Hz].弾性域を越して塑性域に達した後の剛性(post yielding stiffness)は線形モデルの剛性に等しいとしています.
- Yield Displacement of the Hysteretic Isolator ヒステリシス剛性を持つ免震モデルの降伏点.この点以上に変形すると,免震装置の特性が弾性域から塑性域へ遷移します.初期値は1.25[cm].
Excitation Input Parameter
- Max Amplitude:入力地震波として使われている加速度の最大振幅.初期値はそれぞれの実際に観測された地震波の最大加速度と同じです.Sin 波入力の場合は0.3[g].この値を調整することで各地震動の最大加速度を同一とすることができ,同一最大加速度入力での応答の違いを比較することが可能となります. .
- Frequency for Sine Wave 入力加振波に Sin 波を選択した場合,この値を変えることで加振周波数を変えることができます.初期値は1.0[Hz].
Check Boxes
表示させたい応答のラジオボタンをチェックして下さい.
Response Window Zooming
アニメーション時における Earthquake Frame と Time Response Frame の時間軸の表示幅(単位は秒).アニメーションがスムーズに表示されない場合,この値を小さくすることで改善できます.
Number of Spectra Data Point
応答スペクトルを描画するために,1自由度振動系の幾つかの固有周期(ここでは0.5秒〜10秒まで)に対応する応答を求める必要があります.この値はどれだけのデータを用いて応答スペクトルを描画するか,すなわち応答を求めるために何回計算を行うのかということを示しています.なるべく短時間で計算を終わらせたい場合はこの値を小さく,また応答スペクトルを詳細に描画させたい場合にはこの値を大きくして下さい.
Action Buttons
- Calculate:このボタンを押した時点で,各パラメータに対応したテキストフィールドに入力されている値をもとに再計算を行います.“Structure”,“Isolation system”,“Earthquake Input”のパラメータおよび“Number of Spectra Data Point”の値を変更した場合には,このボタンを押して再計算させる必要があります.なお地震波応答の計算に0.02[sec](50[Hz])の積分刻みを用いているため,上部構造および免震層の固有振動数を 5[Hz] 以下に設定して下さい.計算に時間がかかるときには,上述の“Number of Spectra Data Point”の値を小さくすることで計算時間が短縮できます.
- Animate:地震波入力加振時の構造物の動きをアニメーション化します.アニメーションを表示している間,このボタンのラベルが”Stop Animate”に変わり,その間にもう一度押すことでアニメーションが停止します.
- Reset Parameters:すべてのパラメータを初期値に戻します.
- Results Window:特性値や計算結果を表示するための新しいウインドウを生成します.
- Help:ヘルプページにリンクしています.
左上にあるAnimation Frameでは,地震波によって加振されたときの構造物の様子をアニメーション表示します.フレーム下にある左側のメニューを選択することで,それに対応したケースについてのアニメーションを表示することができます.また,右側のメニューを選択することで,構造物の動きを絶対座標系または相対座標系から見た場合のアニメーションを表示できます.
中央上部にあるEarthquake Signal Flameは,計算に使用する入力波の選択を行い,入力波として計算に使用している地震波を表示します.このアプレットでは,入力波として以下の4つの地震波と Sin 波を使用することができます.
エルセントロ 地震波:North-south component recorded at Imperial Valley Irrigation District substation in El Centro, California, during the Imperial Valley, California earthquake of May 18, 1940. マグニチュード7.1,最大加速度0.3495g.
十勝沖(八戸)地震波:NS成分,1968年3月16日八戸市にて観測,マグニチュード7.9,最大加速度0.2294g.
ノースリッジ地震波:North-south component recorded at Sylmar County Hospital parking lot in Sylmar, California, during the Northridge, California earthquake of Jan. 17, 1994.マグニチュード6.8最大加速度0.8428g.
兵庫県南部(神戸)地震波:NS成分,1995年1月17日神戸気象観測所にて記録,マグニチュード7.2,最大加速度0.8337g.
このフレームでは,それぞれの地震波の変位または加速度波形を表示させることができます.
左下に位置するResponse Spectra Plot Frameでは応答スペクトルを表示します.応答スペクトル線図では,変位,速度及び加速度の応答スペクトルを表示します.
中央下部にある Time Response Frame では,Earthquake Signal Frame で表示されている地震波入力に対する時刻歴応答を表示します.ここでは,上部構造の変位,速度,絶対加速度,基礎床の変位,速度,絶対加速度または支柱に作用する剪断力を表示することができます.また新たに,変位(又は速度)と復元力(又は減衰力,復元力と減衰力の合力)との関係図をも表示できるようになった.各応答の最大値や応答低減(=免震時の最大応答値/固定時の最大応答値×100[%]),ベースシェアなどの情報はこのフレームの下部に表示されます.
[N/m]
[Ns/m]
[N/m]
[Ns/m]
[N/m]ここに,はヒステリシス剛性を持つ免震装置の初期固有振動数 [Hz] であり,は降伏点 [m] である.
[N/m]
[N]
ここで,
は上部構造の地面からの相対変位[m].
は上部構造の地面からの相対速度[m/s].
は上部構造の地面からの相対加速度[m/s2].
は地面の加速度[m/s2].
ここに,
は基礎床の地面からの相対変位[m].
は基礎床の地面からの相対速度[m/s].
は基礎床の地面からの相対加速度[m/s2].
ここに,は非線形減衰の累乗係数である.
ここに,復元力は,
はヒステリシス剛性を持つ免震装置の減衰係数であり,次のように固定してある.
減衰率の初期値は2%
また,は以下の微分方程式の解である.
,,,は,ヒステリシス剛性の形状を決定する形状係数である.このケースでは,これらの値を次のように固定している.
復元力がバイリニア剛性を持つようにするため,その剛性を次に示すような規則に従って決定している.
ここで,は永久歪みからの変位である.
V = a / gここに,
V:ベースシェア[-]
a:基礎床の最大加速度[m/s2]
g:重力加速度[m/s2]
これより剪断力は, F = V Wと表される. W構造物の質量.
応答スペクトル(Response Spectra):応答スペクトルは,固有振動数(または固有周期)と減衰率の関数として表される1自由度系に地震波を入力したときの最大応答値をプロットしていったもの.
1自由度系モデルの運動方程式は,ここに,
または,
:減衰率[-]これより,それぞれの応答スペクトルは次のように表すことができる.
:固有振動数[rad/sec]
:固有周期[sec]
:加速度応答 スペクトル
:速度応答スペクトル
:変位応答スペクトル
床応答スペクトル(Floor Response Spectra):床応答スペクトルは,1自由度系への入力に地震波ではなく,はじめに1自由度系の固有周期と減衰率を免震層の固有周期と減衰率に設定して求めた免震層上での応答加速度を入力として用いて求めた応答スペクトル.ただし相互作用によって基礎床の応答がかわることはないものとしている.
上部構造の固有振動数のみを 0.5,1,2[Hz]としたときの応答を計算を行い,比較を行いなさい.
免震層の固有振動数のみを 0.1,0.5,1[Hz]としたときの応答を計算を行い,比較を行いなさい.
質量比のみを 0.1,1,10[-]としたときの応答を計算を行い,比較を行いなさい.
免震層の減衰率のみを 0.1,0.2,0.4[-]としたときの応答を計算を行い,比較を行いなさい.
全ての地震波が同一最大加速度を持つように設定し,そのときの応答を比較しなさい.
パラメータを全て初期値のままで免震装置を使用した場合について構造物の応答計算を行うと,構造物の固有振動数が,構造物を地面に固定した場合の固有振動数とは異なってボード線図上にあらわれるのは何故かについて考察しなさい.
全ての地震波入力から構造物を守る免震装置を設計しなさい.ただし,免震装置は以下の制約を満たすものとする.
Kelly, James M. (1997). "Earthquake-Resistant Design with Rubber", Springer.
Structural Engineering Design Provisions. "1997 Uniform Building Code".
Teb Belytschko, Thomas J.R. Hughes. "Computational Methods for Transient Analysis", North-Holland.
Glen V. Berg. "Elements of Structural Dynamics", Prentice-Hall International.
National Science Foundation (NSF)によるご支援(認可番号CMS 95-28083,Dr. S.C. Liu, program director)さらにMultidisciplinary Center for Earthquake Engineering Research (MCEER)からのご支援に大変感謝しております.また,東京大学の藤野陽三教授には,神戸地震及び八戸地震の記録データの確保にご協力いただいき大変感謝しております.そして,このプログラム開発に当たりいろいろとご指導して頂いた電力中央研究所の大鳥靖樹氏には,ここで改めて感謝の意を表したいと思います.